【完】淡い雪 キミと僕と
「何だよ…」
「べ、別に。何ひとりで美味しそうに食ってんのよってね」
「食べればいいだろ。俺はこんなに食べられない」
「言われなくたって食べるわよ。サラダ食べてからねッ
わたし、物を粗末にする人間は嫌いなの。だから仕方がなく食べてあげているだけだからね?!勘違いしないでよ?!」
食べたいのならば素直に食べればいいものの、口の減らない女だ。
サラダを猛スピードで口に運び、待ってましたと言わんばかりに口いっぱいにピザを頬張る。
両こぶしをぎゅっと握りしめて、目を閉じて幸せいっぱいの顔で「んっまぁ~ッ」と噛みしめる。
その顔を見て、また頬が緩む。可愛らしい女だな、と純粋に思った。
「アンタは案外可愛らしい所がある」
唐突に言ったその言葉に、美麗は面白いくらい反応してくれて、顔を真っ赤にさせる。
「何をからかって……」
「いや、物を旨そうに食う女って良いよなぁ。
俺があんまり食べる事に興味がないからか…」
そう言えば、琴子も小さいくせに大食いで、何よりご飯を美味しそうに食べてくれる所が好きだった。
高級レストランでちまちま食べて、すぐにお腹いっぱ~いとか言う女は余り好きではない。霞でも食って生きてろと思う。
「西城さんは食べなさすぎよ。仕事が忙しいのも分かるけど…体は資本よ?!栄養は取らなきゃダメ!」
ダイエットをしている女が言う台詞ではない。
結局美麗は半分以上のピザをお腹に収め「また太る~」と嘆いていた。
サラダも綺麗さっぱり食べてくれた。物を残して平気な顔をしている女よりかはよっぽど良い。