【完】淡い雪 キミと僕と

「何だよ…」

「べ、別に。何ひとりで美味しそうに食ってんのよってね」

「食べればいいだろ。俺はこんなに食べられない」

「言われなくたって食べるわよ。サラダ食べてからねッ
わたし、物を粗末にする人間は嫌いなの。だから仕方がなく食べてあげているだけだからね?!勘違いしないでよ?!」

食べたいのならば素直に食べればいいものの、口の減らない女だ。

サラダを猛スピードで口に運び、待ってましたと言わんばかりに口いっぱいにピザを頬張る。

両こぶしをぎゅっと握りしめて、目を閉じて幸せいっぱいの顔で「んっまぁ~ッ」と噛みしめる。

その顔を見て、また頬が緩む。可愛らしい女だな、と純粋に思った。

「アンタは案外可愛らしい所がある」

唐突に言ったその言葉に、美麗は面白いくらい反応してくれて、顔を真っ赤にさせる。

「何をからかって……」

「いや、物を旨そうに食う女って良いよなぁ。
俺があんまり食べる事に興味がないからか…」

そう言えば、琴子も小さいくせに大食いで、何よりご飯を美味しそうに食べてくれる所が好きだった。

高級レストランでちまちま食べて、すぐにお腹いっぱ~いとか言う女は余り好きではない。霞でも食って生きてろと思う。

「西城さんは食べなさすぎよ。仕事が忙しいのも分かるけど…体は資本よ?!栄養は取らなきゃダメ!」

ダイエットをしている女が言う台詞ではない。

結局美麗は半分以上のピザをお腹に収め「また太る~」と嘆いていた。

サラダも綺麗さっぱり食べてくれた。物を残して平気な顔をしている女よりかはよっぽど良い。


< 96 / 614 >

この作品をシェア

pagetop