【完】淡い雪 キミと僕と
「いいと思うよ」
そう言えば、美麗は大きな瞳を輝かせ「だよねッ?!」とこちらへ同意を求めた。
そして得意になって続けた。
「知ってる?雪の降り落ちる速度と桜の舞い落ちる速度って一緒なんだって。
今年珍しく桜が咲いている時に東京に雪が降った日があったじゃない。
そう考えたら、ロマンチストな話よね」
自分で話し始めたというのに美麗はハッとして、黙り込んだかと思えば笑っているのにほろりとゆっくりと涙が頬を伝った。
だから、そのロマンチストな北海道情報は誰からだ、と。
「やだ、汗が目から
今日暑いからな」
なんつー古典的な誤魔化し方だ。慌てて冷房の風を強くする美麗。
きっとその頬からゆっくりと流れる涙も、桜や雪と同じスピードだろう。
笑っているのに泣いてるような顔をする女は、泣いてる時も笑いながら泣く。
そのさまは切なくて、ついつい抱きしめたくはなった。しかし出しかけた右手は引っ込めて、君のついた嘘に今日は付き合う事にしよう。
雪が小さな体を伸ばして美麗を見つめるさまは心配そう。
’美麗ちゃん、泣かないで’きっとこいつならそう心で言ってるに違いない。
’雪’か。とても良い名前だ。
雪が降り落ちるように、桜が舞い散るように、君の頬から流れ落ちた涙も、いつか優しい思い出になればいい。
そう願わずにはいられなかった。