【完】淡い雪 キミと僕と
4.美麗『アンタの事は嫌いじゃないわ』
4.美麗『アンタの事は嫌いじゃないわ』
不覚だ。
不覚すぎる。あいつの前で泣いてしまうとは。
そして、北海道の話を自然に思い出してしまう自分は重症だ。だから西城さんと一緒にいるべきではないんだ。分かち合える事が多すぎるのだ。
違う世界線にいる人物だとしても、わたしの気持ちを1番理解してくれて、そして恐らく彼の気持ちを1番理解し共有出来るのはわたしだ。
そんな繋がり、全然欲しくはないのに。
「みゃあ!」
小さくみすぼらしい子猫。
’雪’と名付けた子猫。
猫、とは甘えん坊なのだろうか。少なくともわたしが今まで見てきた猫という生き物は、人に媚びを売るような真似はしなかった。
どこか気高くて、自分の意思をはっきりと持っていて、全てを見透かしたような涼しい目元でじとっとこちらを見つめる。
井上さんが飼っていた、琴音猫もそんな猫だった。
けれどそれはわたしへ見せる態度の一部であって、あの可愛げのひとつもない猫だって、飼い主や好きな人には甘えるのかもしれない。
雪がわたしに、警戒心のひとつも見せずに一途に愛情を向けるように。
軽く踏みつぶせば、奪える小さな命。
だけどこいつはわたしの人間性を何も知らないくせに、必死に甘え、愛情を求めているように、見えるのだ。
そんあ無防備な姿を見せつけられると、猫が嫌いとか、そういった感情はどうでも良いのかもとも思える。わたしは猫は嫌いだが、雪の事はきっと好きなんだ。
「お前は本当に可愛いね」