【完】マイルドビター
『ひなちゃん、』
うつむくあたしの頬に、弘樹の手が触れる
タバコは弘樹の手から離れ、灰皿の上でゆらゆらと煙を立てている。
『愛してるよ、ずっと』
前髪をかきあげられて、おでこにキスされる。
『ひなちゃんのこと、たくさん傷つけたけど、たくさん泣かせたけど、だけど俺はひなちゃんだけだった。これだけは、信じてほしい』
都合が、良すぎる。
今さらそんなの、信じるわけないじゃん。
髪の毛を撫でられ、後ろ首に手のひらが当たる。
逆の手で頬を撫でながら、弘樹の唇が触れる。
変わらない癖。
いつもそのキスの仕方。
あたしが、好きだった、キスの仕方。
「苦い、」
『ん、俺のキス覚えて、ずっと忘れないで』
「イヤ。もう弘樹なんか嫌いだもん、忘れるよ」
『だめ、覚えてて。俺しか見えなくなって、後でいっぱい後悔して、そんで俺のとこ戻ってきて。ずっと待ってるから、日向のこと』