君を愛してはいけない。
「…これ、夢なの?」


「夢じゃない!」


早口で説明していた彼が、私の質問に対して急に声を荒らげた。


「ごめん、これは夢じゃなくて、現実で、…とにかく急いで説明するけど、この背中の傷は手術痕なんかじゃなくて、俺が天使だった時の羽を抜かれた痕なんだ。…それで、俺が天界に戻る時は抜かれた羽が生えて、俺がここで死ぬ時はこの傷が無くなるんだ」


早口で説明し終えた彼は肩で息をしながら、


「ごめん、こんなにぐちゃぐちゃでSF世界みたいな話されても分かんないよな。でもガチなんだよ、俺もうすぐ死ぬんだよ。帰んないといけないんだ」


と、大きく息を吐くと共にそう呟いた。


(…って事は、あんなに天使天使って言ってたのは本当だったって事、?でもそんな事、普通に考えて有り得ないし、そもそも天使なら天使の輪っかとかついてるんじゃないの?それにあんまり詳しくないけど、天使って男性がなるものだっけ、?)


私はぽかんと口を開けたままで。


けれどその間に、頭の中で何人もの私が討論を始める。


なのに出てくるものは伯に対する質問ばかりで、何一つとしていい答えが見当たらなくて。


「…え、伯、」


そして、何故こんな事になったのかというそもそもの原因に辿り着いてしまった私は、震える口を無理やりこじ開けた。
< 10 / 14 >

この作品をシェア

pagetop