君を愛してはいけない。
「……………そっか、」


嗚咽を堪えながら、必死で震える口角を上げて笑顔を浮かべることしか出来なかった。



「最後だから、もう1回キスしたい?」


それから、どのくらい時間が経ったのだろう。


もう時間が無いと彼は何度も言っていたから、私の中では15分位経っている気がするけれど、本当は15秒程なのかもしれない。


とにかく伝えたい事は、彼のその誘いを受けた私が断る理由なんて全く無くて、


「最後なんて言わないで、」


全てがSF世界の様な展開の中、彼の唇をまた奪えた事だった。








「次は天界で会おうな、桃花」







キスをしていてお互いの唇が塞がっていたのに、どうして伯の言葉が鮮明に聞こえたのかは分からない。





けれど、伯の羽から出る光がどんどん強くなったのが目を閉じていても分かって、きつくきつく抱き締めていたはずの彼の感覚が少しずつ無くなっていったのは確かで。







「最後にキスが出来て良かった、愛してるよ」







確かに耳元で、伯の声が聞こえた。




と同時に聞こえたのは、今までで1番大きな雷鳴の音と、


ピーッ……ピーッ……


という、やたらと大きな心電図の音。
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