君を愛してはいけない。
私と一緒にその説明を聞いていた伯の家族は泣いていたか泣いていなかったのか、どんな様子だったかも余り思い出せない。


けれど、あのお医者さんと彼の家族が纏う雰囲気から、伯が目を覚ますのは私の想像以上に先だということは何となく分かった。



けれど。


「伯、私は、信じてるからね」


制服の長袖で自分の目元を拭いながら、私は反応を示さない彼に話し掛ける。


「伯が絶対に目を覚ますって、信じてるからね」



手を握ってもさすってみても、優しく叩いてみても、何の反応も示さない伯。


そんな彼は外国の血が少し入っているらしく、光の加減でたまに目の色が青色に見える。


私はその目が凄く好きで、吸い込まれそうなあの感覚を忘れる事が出来ない。


けれど、約2週間も彼は目を開けていないから、彼がどんな青色の目を持っていたかも忘れかけてしまう。



まだ、沢山沢山彼に話したい事があるのに。


今までに沢山未来への約束を交わしてきたのに、そのほとんどが叶えられずに終わってしまうのだろうか。


マイナスな事は考えてはいけないと思っているのだけれど、それでも私は弱いから、自然と考えてしまう。


(……)


遠くから、雷の鳴る音が聞こえる。


ニュースでも今日は夜にかけて豪雨になると言っていたから、傘を持ってきておいて正解だった。
< 4 / 14 >

この作品をシェア

pagetop