君を愛してはいけない。
言葉に出して聞いていいのか分からない私がゆっくりと彼の背中を指さした直後、私の言いたい事を察した伯は、
『あー、この傷の事でしょ?これね、俺が飼ってる馬鹿でかい猫に引っ掻かれたんだよねー』
と、笑った。
もちろん、そんな嘘に誤魔化されない私が
『…違うよね?』
と苦笑いを浮かべて聞いた後、彼は、
『…はい。この傷はちっちゃい頃に肩甲骨の手術を受けた時に出来たものです。嘘ついてすみませんでした』
と、自分の濡れた髪をぐしゃぐしゃと掻き回しながらくしゃりと笑った。
過去にそんな一件があったから、彼は度々その傷を“天使の羽の傷痕”とネタにして私とのキスを断ってきていた。
例えどんなに良いムードになろうと、彼は自分から絶対にそういう事をしようとしなかったし、私にもそういう事をさせなかった。
けれど、今なら。
(……例え伯がいつか起きてもこの事を覚えてるわけないし、私が言わなければ良いだけの事だから、)
キスが出来るのではないか。
ガッシャーンッ……
どこか近くで雷が落ちたのか、かなり大きな落雷の音が聞こえる中、私はそっと彼の鼻と口を覆う酸素マスクを外した。
『あー、この傷の事でしょ?これね、俺が飼ってる馬鹿でかい猫に引っ掻かれたんだよねー』
と、笑った。
もちろん、そんな嘘に誤魔化されない私が
『…違うよね?』
と苦笑いを浮かべて聞いた後、彼は、
『…はい。この傷はちっちゃい頃に肩甲骨の手術を受けた時に出来たものです。嘘ついてすみませんでした』
と、自分の濡れた髪をぐしゃぐしゃと掻き回しながらくしゃりと笑った。
過去にそんな一件があったから、彼は度々その傷を“天使の羽の傷痕”とネタにして私とのキスを断ってきていた。
例えどんなに良いムードになろうと、彼は自分から絶対にそういう事をしようとしなかったし、私にもそういう事をさせなかった。
けれど、今なら。
(……例え伯がいつか起きてもこの事を覚えてるわけないし、私が言わなければ良いだけの事だから、)
キスが出来るのではないか。
ガッシャーンッ……
どこか近くで雷が落ちたのか、かなり大きな落雷の音が聞こえる中、私はそっと彼の鼻と口を覆う酸素マスクを外した。