【女の事件】とし子の悲劇・2~ソドムの花嫁
第37話
2020年2月29日に、アタシは6度目のダンナと離婚した後、しばらくの間一人身になっていた。

なのに、武方さんがアタシにまた再婚をすすめた。

アタシは、武方さん夫妻のいいなりになって徳島県阿南市才見(さいけん)町で暮らしている武方さんの奥さまのお父さまの知り合いの家の長男さんで、ケーズデンキに勤務しているひろみちさん(46歳)とお見合いをして再婚した。

8月いっぱいまでは再入籍ができない(アタシの再婚保留期間が8月いっぱいまでになっているため)ので、7月10日からひろみちさんの家で同居を始めて、9月に再入籍をするのを待つことにした。

阿南市才見町のひろみちさんの家にて…

家には、アタシとダンナとダンナの両親ともうひとり、ダンナの職場でパート勤務をしている女性の息子さんのてつやさんが暮らしていた。

てつやさんは、市内日開野町にあるひろみちさんの弟さんのひろつぐさんが経営しているIT会社に勤務をしていたが、ノイローゼ気味になっていて会社をやめかけていた。

2020年8月10日の朝のことであった。

朝の食卓には、アタシとダンナとてつやさんがいたが、てつやさんはひとことも話さずに口を閉ざしていた。

この日は、てつやさんが会社に出勤をしなくなってから2週間が経っていた。

朝8時過ぎに、うちに会社から電話がかかって来て、てつやさんに会社にきてほしいと言うた。

会社の人は『8月31日に納期分の製品にバグが発生したので大至急バグの部分を直しに来てほしい…』と言うたので、アタシは『分かりました…てつやさんに伝えておきます。』と答えてた受話器を置いた。

アタシは、てつやさんにやさしい声で言った。

「てつやさん…会社の人が大至急きてほしいっていうてたよ。」
「何だよぉ…オレはあの会社をやめたいと言うているのに、行けと言うのか!?」

てつやさんがアタシに怒った口調で言うたので、アタシはイヤそうな声でてつやさんに言い返した。

「どうしてそんなに怒るのよぉ…せっかく入社した会社をなんでやめるのよぉ~」

アタシはてつやさんに『バグを直せるのはてつやさんしかいないのよ…』と言うしかなかった。

朝8時50分に、てつやさんが家を出発した。

アタシは、流しで食器の後片付けをしていた。

ダンナは、読みかけの徳島新聞をひざの上に置いて、大きくため息ついてからこう言うた。

「ひろつぐは…いつになったら経営に本腰を入れるか…あのクソバカは経営者としての自覚がない!!(ブツブツ)」
「あなた。」
「ひろつぐが『会社を興したい…』と言うて、家の中でわめくだけわめいて、せっかく就職できた職場に文句を言いまくった…クソバカのワガママに答える形でアレコレしたのだ…会社を興したけど、経営は主任の男性に全部丸投げして…こんなことになるのであれば、てつやさんをひろつぐの会社に再就職をさせるのじゃなかった…一度、ひろつぐをうちに呼んで怒鳴りつけないとダメだ!!」

ダンナはブツブツと言うた後、イスの上に置かれている黒の手提げかばんとジャケットを手に取って、会社に出勤した。

家を出て、会社に出勤をするひろみちさんの背中は、とてもさみしそうであった。

ここから、新たな悲劇が始まった。

深刻な事件は、朝9時半頃に発生した。

現場は、阿南市日開野町にあるIT会社で発生した。

事業所に突然侵入してきた真っ黒の目だし帽をかぶった男が、刃渡りのするどいサバイバルナイフで主任の男性の右肩を切りつけた。

「たっ…助けてくれ…命だけは…死にたくないよ…グワー!!」

主任の男性は、目だし帽をかぶった男にサバイバルナイフで刺されて殺された。

目だし帽をかぶった男は、居合わせた従業員さんたち5~6人にもサバイバルナイフで次々と斬り(きり)つけた。

「助けてくれ!!」

職場は、恐ろしい地獄絵と化した。

事件発生から1時間20分後の朝10時50分頃のことであった。

日開野町のIT会社の現場に徳島県警のパトカーがたくさん停まっていた。

県警の捜査1課の刑事たちによる現場検証が中で行われていた。

会社の主任の男性が死亡、従業員さんたち5~6人が大ケガを負った事件は、目だし帽をかぶった男の身元が不明な上に男が証拠隠滅をはかったので、事態は深刻になった。
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