【女の事件】とし子の悲劇・2~ソドムの花嫁
第42話
9月14日に、ひろみちとさおりさんが離婚が確定した。

才見町の家に、大阪から帰ってきたひろみちのお兄さん夫婦の家族3人(夫婦と8歳の長女)が一緒に暮らすことになった。

ひろみちの両親は、アタシやさおりさんよりも兄嫁さんの方が料理が上手で器量もよいとほめまくっていた。

兄夫婦の8歳の長女が一緒の家にて暮らすので、ひろみちの両親は『孫と一緒に暮らせるからうれしい。』と言うて、甘やかすだけ甘やかしていた。

さおりさんと離婚をしたひろみちについて、ひろみちの両親は『ひろみちには、最初からお嫁さんは必要なかったのよ…』と決めつけて『独身の方が気楽でいいよ…』と言うて、独身の方がプラスになるとさとした。

ひろみちの家は、お嫁さんを粗末にしたので、近いうちに取り返しのつかない非常事態が発生するかもしれないと思っている。

9月16日のことであった。

武方さんは、阿南市才見町のひろみちの家に行って、ひろみちの両親にどうしてさおりさんと離婚をしたのか説明を求めたけど、取り合ってもらえなかったので困っていた。

その日の夜8時半頃のことであった。

武方さんは、高松市昭和町のサークルKにやって来て、アタシにひろみちと話し合ってほしいと求めたので、アタシは怒っていた。

アタシは、新しく来たお弁当を陳列ケースに入れながら武方さんに言うた。

「あんたね!!アタシはひろみちの家のもんにブジョクされたから、許さないと激怒しているのよう!!アタシの次に来たお嫁さんも追い出した!!アタシはお嫁さんを粗末にする家のとは金輪際(こんりんざい)かかわらないから!!…あんたね、人の家のもめ事に首突っ込むのもたいがいにしいよ!!」
「とし子さん、こっちは困っているのだよ…大阪からひろみちさんのお兄さん夫婦の家族3人が出戻って来たのだよ…収入が安定した仕事を投げて、実家へ出戻りだよ…なんとも思わないのかね?」
「あんたはかんちがいをしてるわよ…お兄さん夫婦の家族は、Uターンして阿南市で就職をするために帰ってきたのよ!!何でアンタはそこで早ガッテンするのよ!!それじゃあ武方さんに聞くけど、お兄さん夫婦の家族がUターンして、実家へ帰ることは悪いことかしら!?」
「悪いことだよぉ~」
「あんたは、頭がパッパラパーになってはるわねぇ~」
「何だよ!?頭がパッパラパーとはどういうわけなのだ!!」
「店の中でおらばんといてくれるかしら!!アタシは再婚なんかしたくないわよ!!アタシがイヤといよんのに、なんであんたは無理強いするのかしら!?」
「分かってるよぉ…だけど、天国にいるお父さまは…」
「父は、天国ではなく地獄に墜ちた(おちた)のよ!!」
「地獄に墜ちたって…とし子さんのお父さまは、家族のためにせっせと働いていたのだよ。」
「やかましいわねダンソンジョヒ魔!!2年前のあの日に、やくざが持っていたトカレフで撃たれて命を落とした理由が分かっていないわね!!」
「とし子さん、とし子さんのお父さまはやくざにうらまれるようなことは一切していないのだよ…」
「そのように言えるコンキョはあるのかしら!?」

「とし子さんのお父さまのことは、知人である私がよく知っているのだよ…」
「あんたね、知ったかぶりでものを言わないでよね!!」
「知ったかぶりじゃないよ…とし子さんのお父さまは毎日職場と家庭の往復だけで、朝から晩まで家族のためにせっせと働いてきたのだよ…出された食事しか口にしない人だった…冷めたお弁当でもおいしいおいしいと言って食べていた…お給料は全額家族に渡していた…毎月の小遣いは1万円でがまんしてきた人だよ…やくざにうらまれるようなことはしていないのだよ…毎日休まずに出勤して与えられた仕事だけをしてきた人だよ…お給料が少なくても文句ひとつ言わずにがまんしていたのだよ…」
「はぐいたらしい(あつかましい)わねダンソンジョヒ魔!!あんたの言うことは、ウソいつわりばかりよ!!」

アタシは、ひと間隔をあけて武方さんにこう言うた。

「あのね!!あと5分したら本部の人が来るわよ!!本部の人が来る前に帰んなさいよ!!」
「帰んなさいよって…」
「ここは職場よ!!」
「分かっているよぉ…」
「それじゃあ帰ってよ!!」
「だけど、このままでは帰れないのだよ…」
「もう怒ったわよ!!今、本部の人が到着したから、言いつけに行くから…逃げないで!!」

アタシは、本部の人に武方さんが仕事の手を止めたことを言いつけた後、バイトを再開した。

ところ変わって、店舗の奥のロッカールームにて…

ロッカーの戸を開けたアタシは、ほがそ(ぐちゃぐちゃ)の髪の毛を右手で思い切りかきむしった。

その後、着ていた青色のブラウスを脱いでロッカーの戸に思い切り叩きつけた。

ブラウスの下は、白のブラジャーを着けていた。

アタシは、再び鏡に写る顔を見つめた。

気持ちがキーッとなっていたので、また髪の毛をぐしゃぐしゃにかきむしった。

そして、乳房(むね)に着けていた白のブラジャーを思い切りちぎって、ロッカーに叩きつけた。

イライラしていたアタシは、むなしくなったので、その場に伏せて泣いた。
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