Ruka~君の最期の願い~
「ダメ……ですか?」
 困った顔で,彼女は項垂(うなだ)れた。それはまるで,飼い主に(しか)られて耳を垂らしている犬みたいに見えて,俺は不覚にも「可愛(かわい)い」と思ってしまった。
「いや,ダメってことはないけど……。なんで俺なの?」
 俺は教師としてのキャリアもまだ浅いし,「教師と教え子の恋愛はご法度(はっと)」という()り固まった考え方はしない。ただ,どうして自分なのかという疑問が()いただけだ。
「わたし,前からずっと木下先生のこと好きだったんです」
「マジ⁉ ……俺のどんなところが?」
 突然の告白に(おどろ)いたあと,俺は彼女に訊ねた。女子生徒にモテる要素なんてあるのだろうかと,自分では思っていたから。
「先生の授業,すごく分かりやすくて面白いし。それに,わたしが具合悪い時,いつも心配してくれてますよね。そういう優しいところが好きです」
 そう答えて,彼女は少しはにかんだ。()れていたのか,頬を赤く()めていたのが可愛かった。
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