Ruka~君の最期の願い~
 そう言いながら,彼女は笑っていた。自分の(やまい)としっかり向き合い,一日一日を大事に生きていると分かる瑠花の笑顔は,いつ見ても眩しかった。
「――木下先生,おはようございます」
「おはようございます,お母さん」
 出かける娘を見送るために,彼女の母親も出てきた。瑠花は俺と付き合い始めたことを,ちゃんと母親にも話していたらしい。
「先生,今日は娘のことよろしくお願いしますね」
「はい。夕方にはお宅まで送り届けますから。瑠花さんと一緒に楽しんできます」
 彼女の体調のことも考慮(こうりょ)し,デートは夕方までと決めていた。瑠花はちょっと不服そうだったけれど……。
「じゃあ瑠花,行こうか」
「うん! お母さん,行ってきまーす!」
 彼女は母親に手を振り,俺の愛車であるキューブの助手席に乗り込んだ。
< 25 / 72 >

この作品をシェア

pagetop