Ruka~君の最期の願い~
「だから,再検査もセカンドオピニオンも拒んだのか? 医療費かかるから」
「うん。だって,お母さんに負担かけたくないんだもん。お母さん,一人で頑張って働いてくれてるのに。わたしが病気になっただけで,相当ショック受けてるみたいだから」
 なるほど……。瑠花の学費に生活費,そして医療費……。母親の収入だけでは家計のやりくりが大変だったことだろう。でも,それならあの一戸建ての家は?
「あの家は……持ち家?」
「家はお母さんの実家なの。お祖父(じい)ちゃんがお祖母(ばあ)ちゃんと結婚した時に建てたんだって」
「ああ,そういうことか」
 森嶋家の事情は分かった。けれど,この話題は楽しいデートにはそぐわなかったかもしれない。
「なんかゴメン。デートの時に話すことじゃないよな」
「ううん,大丈夫。気にしてないから」
 瑠花はそう言って笑ってくれたので,申し訳なく思っていた俺はちょっと救われた。
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