Ruka~君の最期の願い~
「うん。わたしね,ピンクよりブルーが好きなの。だから嬉しいよ」
 俺はホッとした。このイルカのぬいぐるみ,税込みで三〇〇〇円近くかかったのだ。それで「ピンクの方がよかった」と文句を言われたら,ムダになった約三〇〇〇円が痛い。公立高校の教諭は公務員なので,安月給なのだ。
 ……それはさておき。
「ねえ,ケイちゃん。この子,なんて名前にしようか?」
 ぬいぐるみに名前? 女の子なら,つけたがるものなんだろうか? ……ああ,でも俺の昔の彼女も,俺がプレゼントしたぬいぐるみに名前をつけていた覚えがある。
 でも,高校生の瑠花が言うと何だか無邪気で可愛くて,俺はガラにもなく一生懸命考えた。
「……じゃあ,"ルカ"ってどうかな?」
 そのわりに,やたら安直(あんちょく)な名前になってしまったけれど。
「ルカ? イルカだから?」
「まあな。それもあるけど,瑠花が可愛がるんだから"ルカ"でいいかなー,って。……ダメかな?」
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