Ruka~君の最期の願い~
「ダメじゃないよ,全然。分かりやすいし,可愛いからわたしも気に入った」
 自分のセンスのなさに呆れていた俺は,瑠花の優しさにまたも救われた。
「よしっ! じゃああなたは,今日からルカちゃんだ♪ よろしくね!」
 ……可愛い。イルカのぬいぐるみに無邪気に話しかける彼女が,俺はすごく(いと)おしく感じた。
 それまでに何度も,瑠花のことを「可愛い」と思った。それはきっと,彼女のその一瞬一瞬がキラキラしていて,眩しかったからだと思う。
 残された時間が短かった彼女にとっては,その一瞬一瞬こそがとても(とうと)くて(はかな)くて,大切な瞬間だったんだと思うから。
「……ねえ,ケイちゃん。お願いがあるんだけど」
「うん? なに?」
「わたしがいなくなった後,この子はケイちゃんが持っててくれないかな?」
「え…………」
 俺はすぐに返事ができなかった。別にぬいぐるみを遺品としてもらうことには抵抗がなかったけれど(()的にどうか,という問題はあったが)。
「いなくなった後」なんてサラリと言えてしまう彼女が何だか悲しすぎて……。
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