Ruka~君の最期の願い~
 ――またしばらく歩いていると,急に瑠花の歩くスピードが落ちてきた。
「どうした?」
 顔色の優れない彼女に問うと,少し休ませてほしいと彼女は言った。
「ちょっと……,頭が痛くて」
「分かった。そこのベンチで休もうか」
 ちょうど見える位置にベンチがあったので,俺達はそこで休むことにした。
「救急車呼んだ方がいい?」
「ううん,大丈夫。薬持ってるから,それ飲めば(おさ)まる」
 彼女はバッグからピルケースとペットボトルの水を出し,ケースの中の錠剤を一錠水で飲み下した。
「その薬っていつも持ってんの? 学校行く時も」
「うん。いつ症状が出るか分かんないから常備してる。村田先生も知ってるよ」
 まだ顔色は思わしくなかったけれど,答える彼女の声はハッキリしていた。
 養護教諭なら知っていなくてはならないことだろう。でも,担任であり,一応()()でもある俺にそれまで話してくれなかったのは何故(なぜ)だったんだろう?
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