Ruka~君の最期の願い~
 申し訳なさそうに詫びた瑠花を,俺は宥めた。具合が悪くなったのは誰のせいでもない。もちろん彼女にも責任はなかったのだから。
「うん。ありがと」
 嬉しそうにはにかんだ彼女。俺は彼女のこの笑顔が大好きだった。
 いつまで一緒にいられるか分からないから,一緒にいられる間はこの笑顔を見られるだけで幸せだった。
 そしてそれは彼女がいなくなった今,俺の中にほろ苦い思い出として刻まれている。
 それからの車の中で,瑠花は色々打ち明けてくれた。
 とりあえず,九月ごろまでは薬の効果が続きそうだということ。それでも週に一回は通院し,点滴を打ってもらわないといけないと主治医から言われたこと。
 そして……,進路のこと。
「わたしね,ホントはケイちゃんみたいな教師になりたかったの。でも,この病気が分かったからそれは不可能になっちゃった」
「えっ」
 あまりにも悲しい現実。それは彼女のささやかな夢までも奪ってしまったのだ。
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