Ruka~君の最期の願い~
「そういや,森嶋は? 今日は一緒じゃないんだ?」
俺は声を潜め,江畑に訊ねた。彼女はいつも瑠花と一緒に下校していたはずなのに,この日に限って瑠花は終礼後すぐに教室を出て行ったのだ。
「瑠花なら先に帰るって。一昨日,具合悪くなったんでしょ? だから一応念のため,病院で診てもらうって言ってたよ」
「一昨日,って……。俺のせい?」
俺はちょっと責任を感じていた。具合が悪くなるとかもしれないと分かっていたのに,デートに誘うべきじゃなかった,と。
「あー,違う違う! センセのせいじゃないから,気にしないでよ。それより,進路希望のプリント!」
ネガティブになって落ち込む俺の背中を,江畑が元気づけるようにバシバシ叩いた。……正直言って,かなり痛かった。
――それはともかく。
「ああ,そうだったな。――コレなんだけど」
俺は瑠花から提出された進路希望の用紙を江畑に手渡した。
教師としては,生徒の個人情報を他の生徒に漏らすなんて言後同断の行為だろう。これがバレたらどうなるか……,俺は内心ビクビクしていた。
でもそれ以上に,俺は"教え子と交際する"という世間的なタブーを犯していたから,それに比べれば大したことはなかったかもしれないが。
俺は声を潜め,江畑に訊ねた。彼女はいつも瑠花と一緒に下校していたはずなのに,この日に限って瑠花は終礼後すぐに教室を出て行ったのだ。
「瑠花なら先に帰るって。一昨日,具合悪くなったんでしょ? だから一応念のため,病院で診てもらうって言ってたよ」
「一昨日,って……。俺のせい?」
俺はちょっと責任を感じていた。具合が悪くなるとかもしれないと分かっていたのに,デートに誘うべきじゃなかった,と。
「あー,違う違う! センセのせいじゃないから,気にしないでよ。それより,進路希望のプリント!」
ネガティブになって落ち込む俺の背中を,江畑が元気づけるようにバシバシ叩いた。……正直言って,かなり痛かった。
――それはともかく。
「ああ,そうだったな。――コレなんだけど」
俺は瑠花から提出された進路希望の用紙を江畑に手渡した。
教師としては,生徒の個人情報を他の生徒に漏らすなんて言後同断の行為だろう。これがバレたらどうなるか……,俺は内心ビクビクしていた。
でもそれ以上に,俺は"教え子と交際する"という世間的なタブーを犯していたから,それに比べれば大したことはなかったかもしれないが。