Ruka~君の最期の願い~
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――そして午後一時過ぎ。俺は新宿区内の大きな総合病院の五階にある,脳外科の病棟にいた。
三〇分ほど前に来て,病院内のカフェで軽く昼食は済ませてある。
瑠花の病室は575号室で,四人部屋だった。入って右側の窓際のベッドのリクライニングが起こされており,そこに彼女はいた。付添い用のパイプ椅子に座っている女性は,彼女の母親のようだ。
「あの,瑠花さんに会いに来ました。三年一組担任の木下といいます」
「ああ,先生ですか。どうも……,ありがとうございます。瑠花の母です」
俺に会釈した瑠花のお母さんは,何だか落ち着かない……というかひどく取り乱しているように見えた。俺の思い過ごしだったろうか?
「あっ,木下先生! 先生がわたしの担任なんですか?」
瑠花自身は思っていたよりも元気そうだった。
彼女のことは,前からよく知っていた。一年生の頃から真面目で面倒見のいい生徒だと,好印象を持っていた。
そして,彼女はすごい美少女でもあり,目立っていた。