Ruka~君の最期の願い~
「あるよ,きっと!」
 彼女はキッパリと断言した。
 その説得力アリアリすぎる言い方に,俺は笑ってしまったけれど。もしかしたら本当にあるかもしれない,とも思った。
 そしてその「もしかしたら」は,五月の半ばに本当になったのだ――。

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「――三十八度!? マジかー……」
 その朝は体がだるく,寒気(さむけ)もしてなかなか起きられなかった。
 それでも必死にベッドから()い出て体温を(はか)った結果が,このセリフである。
 そういえば,前の夜から何だか(のど)も痛かった。
 ――後から分かったことだが,俺はこの時夏カゼをひいていたらしい。
「これじゃ,今日は休むしかないな……」
 ゴホゴホとせき込みながら,「いや,今日だけじゃ済まないだろう」とも思っていた。
 とにかく,学校に電話しなければ……。俺はスマホで学校の職員室にコールした。
「――あ,おはようございます。教員の木下ですけど……」
 電話に出た教頭に欠勤理由を告げ,クラスのことは副担任に頼むことと,授業は自習にすることを言づけて,電話を切った。
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