Ruka~君の最期の願い~
 俺は担任になったことはないけど,社会科の教科担当として彼女を教えたこともある。その授業の時も,彼女は俺の話を真剣に聞いてくれていたし,テストの成績も優秀だった。
 そんな彼女はよく体調が悪そうにもしていて,それが俺も気にはなっていた。
「前から頭痛とかひどかったって? 江畑から聞いたよ」
「はい,心配かけちゃってすみません。もう,日奈ったら!」
 最後には親友に(どく)づく彼女に,俺は軽く吹き出しそうになった。――二人が親友だと知ったのは,それから少し後のことだったけれど。
「江畑は悪くないよ。俺がムリに聞き出したんだ。だからアイツを(うら)むな」
「はい。――養護(ようご)村田(むらた)先生には話してあるんですけど,このごろちょっとそれが長引いてるので気になって,診察に来たら検査入院することになっちゃって」
「もう検査は終わったのか? 退院はいつごろになりそう?」
「先生,すみません! ――瑠花。お母さん,ちょっとお茶()()えてくるわね」
 瑠花の母親が唐突(とうとつ)に,急須(きゅうす)を手に病室を飛び出していった。俺は何か悪いことを言ったのだろうか?
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