先輩、私だけに赤く染まって
「やっぱり彼氏いたんじゃん」
不自然な距離をとって話す私たち。
「…そんなんじゃないから」
目の前にいるのに、よくそんなこと聞ける。
「先輩、やっぱり戻りましょ」
これ以上和樹と話したくない私は先輩の腕を引いて、来た道を戻ろうとする。
和樹のことを気にして戸惑いながらも先輩は抵抗しない。
「待てよ穂乃果、俺と話をしてくれよ」
だけど和樹の声が踏み出した足を止めさせた。
そしてこちらに向かってズンズンと近づいて来て私の腕を掴んだ。
「ちょっと、離して」
なんなの、どうして今日に限ってこんなにしつこいの。
この間はすぐに帰ったのに。
先輩の腕がいつの間にか私の手から離れていて、その手が和樹を制する。