先輩、私だけに赤く染まって

「は?何言って…」


先輩の影から見える和樹は動揺を隠すように睨んでいた。


「無理やり彼女の気持ちを手に入れたって、何も嬉しくないでしょ」


何も返す言葉がないようで、口を噤んだ。


凄い。先輩意外と肝が据わってるのかもしれない。


「とりあえず今日は帰ろう、ね?」


納得いかないように下を向いた和樹が次に顔を見せたときには、もう苛立ちは見えなかった。


「…穂乃果、ごめんな。でもやっぱり話したいんだ。また来るから」


真剣な表情でそう言うと、私たちの前から先に立ち去った。


無意識にその後ろ姿を見送る。


「先輩、巻き込んじゃってすみませんでした」


隣に先輩の存在を思い出し、迷惑をかけたことを謝った。

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