先輩、私だけに赤く染まって
今、距離を置かれた気がした。
引かれた訳じゃない。
先輩は物腰柔らかそうに見えるけど、本心を見せてくれることはない。
硬い殻で、何かを隠してる。
「いえ、話してないです」
「そっか」
一言そう言って私の問いには答えないまま、また私の頭を撫でた。
今日、先輩スキンシップ多い。
私を慰める為にやっているんだろうけど、もはや癒えるを通り越して心臓バクバクだ。
撫でている手は凄く優しいのに、顔には微かに曇りが見える。
何が、先輩を苦しめているんだろう。
そのまま先輩は家まで送ってくれた。
流石に和樹は昨日の今日では居なくて、少し緊張していた私はホッとした。
だけど先輩が何を思っているか分からなくて、悶々とした気持ちは家の前で別れてからもずっと抱えていた。