先輩、私だけに赤く染まって
「あの、すみません」
下を向いて足を揉んでいた私の前に、誰かがたつのが見えた。
え、私に話しかけてるの?
顔を上げると一人の男の人が立っていた。
男の人と言うより少年か。多分、私より年下。
「はい?」
「一緒にいたの、八木涼子さんですよね」
明らかに涼子のことを知っているような口振り。
私が呆気に取られて何も言えなくても、気付いてすらいないのか気にしていないようだった。
まるで飼い主を見つけた子犬のような喜びを抑えきれない表情。
「今度の大会、応援してますって伝えて下さい」
少年はそれだけ言うと走るようにしていなくなった。
「ちょっと!名前…」