先輩、私だけに赤く染まって
なんなんだ、彼は。
ここから離れるわけにもいかないし、あっという間に彼の姿は見えなくなった。
ただの涼子のファン?沢山いそうではあるけど。
それなら直接本人に言えばいいのに。
「何見てるの?」
「あ、涼子」
突っ立って通路の方を向いていた私を怪訝な表情で見る。
「さっき涼子のファンの男の子が、今度の大会応援してるって」
私たちの間に『…』といった空白の時間が生まれた。
「え、何。それだけ言われたの?」
ごもっともな涼子の反応に私はただ頷く。私だってその情報しか知らないもん。
「顔は可愛い感じの子だった。背は高くて、あの制服は私立の…」
出来る限りの見た目を伝えても涼子に変わった反応はなかった。