先輩、私だけに赤く染まって
「穂乃果は俺と話したくないだろうけど、本当に身勝手だけどどうしても俺はもう一度話したい」
逆光で顔はよく見えないけど、その声色は落ち着いているように思えた。
逃げ出すな、穂乃果。
前に進むって決めたでしょ。
「私も和樹と話す決心がついた。でもちょっと待ってて」
そう言って和樹から離れた場所に移る。
先輩に電話する為に。
ここで先輩に伝えることなく和樹と話したら、なんだか先輩は二度と私に振り向いてくれない気がする。
それもただの私の第六感だ。
電話するべきかまだ迷う。何も写していない画面をしばらく睨んでいた。
だけどあのとき私のことを止めた先輩の顔を思い出して、通話ボタンに触れた。