先輩、私だけに赤く染まって

和樹が私と接触し始めたとき、もしかしたら浮気の誤解が解けたんじゃないかと思ったけど。


「ずっと前に別れてたけどこの間偶然会ったときに香織が口走ったんだ」


香織と和樹、そんなに長くは続かなかったんだ。


まさかここまで綺麗に騙されてくれるなんて香織も思ってなかっただろうな。


それほど私たちの絆は脆いものだったのかもしれない。


たった一晩で私の世界は全て壊れた。


「私は浮気なんてしていなかったよ」


和樹は悲しそうに、悔しそうに眉を潜めた。


あのときどれほど訴えても伝わらなかった言葉。


「私が和樹とキスできなかったことで和樹を不安にさせていたと思う。それはごめん。でも、私が和樹を好きだったのは嘘じゃない」


和樹と幼馴染という関係から、恋人になったあのとき。私はキラキラ輝いていた。

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