先輩、私だけに赤く染まって

だけどそれじゃダメだ。


もうお互い解放しないといけない。過去の呪縛も、思い出も。


和樹は中々首を縦には振らなかった。


2年に近い期間、ずっと私は和樹のことを引きずっていたのに、こんなにあっさりと突き放せたことに自分でも驚く。


今度こそ逃げるのではなく、前向きな別れ。


そう思えたのは先輩がいたからだ。


「…分かった。穂乃果のこと、大事に出来なくて本当にごめん。幸せになって」


長い間黙っていた和樹だったけど、最後には私を意思を尊重してくれた。


切なげな顔を残して、和樹が先に席を立つ。


もう私たちは会わない。まだ高校生の、ただの口約束。


なんの効力もないそれだけど、私にとっては大きな一歩だった。

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