先輩、私だけに赤く染まって

余程焦っているのか、語尾がいつもと全く違う。


気持ち良かった、って言っちゃまずかったのかな。


抱き締められている間は暖かくて、身体中に心臓の音が響き渡って、それは確かに『気持ち良い』だった。


「あ、落ち着いた、の方が合ってるかな?」


心の中で気持ちを整理すると、そっちの方が適切な気がしてきた。


それにしてもそんなに怒んなくたっていいのに。


「もうー…、ホントに勘弁してよ」


再び脱力したように膝に肘をつく。


「すみませんて…」


何が先輩を怒らせたのかよく分からないままとりあえず謝っておく。


せっかくの二人の時間、拗ねられたままじゃ嫌だ。


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