先輩、私だけに赤く染まって

「帰ろうか」


もうこれ以上話す気はないのか、先にベンチから立ち上がった。


そしてこちらを向いた先輩に今度は私が慌てる番になる。


「わっ、待って先輩!」


腕を掴んで強引にベンチに座らせる。


先輩のシャツの右襟に赤い色がじんわり見えた。


座っていたときは反対側だから見えなかったんだ。


抱き締めあっていたときに私のリップが付いてしまったようだ。


危ない。このまま帰らせなくて良かった。


「すみません、何で今日色付きリップ付けちゃったんだろ…」


なかなか落ちない。


それにしてもシャツにリップの赤い色が付いてるの、イケナイことしてた証拠みたいで後ろめたくなる。


真面目な先輩がこんなもの付けて帰ってきたらお母さんきっと仰天しちゃうよね。


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