先輩、私だけに赤く染まって
先輩、自分のこと俺って言うんだ。僕って言ってても違和感ないのに。
図書室での出来事を思い出しては一人でニヤけ、今日はいつもよりずっと良い気分で帰ることが出来た。
「おい、何一人で笑ってんだ?」
なのに、コイツに見られるとは…。
こんなに近くに来るまで全く存在に気付かなかったなんて、不覚。
「…和樹」
「久しぶりなのにそんな顔すんなよ。幼馴染じゃん」
私と和樹は親同士が仲良くて、兄弟のように育った。
だけど高校が別々になって、そのまま関わりが少なくなったんだ。
「なんか良いことあったの?」
やけにしつこく聞いてくる。
何となく、和樹には先輩のことを言いたくない。