先輩、私だけに赤く染まって

先輩、自分のこと俺って言うんだ。僕って言ってても違和感ないのに。


図書室での出来事を思い出しては一人でニヤけ、今日はいつもよりずっと良い気分で帰ることが出来た。


「おい、何一人で笑ってんだ?」


なのに、コイツに見られるとは…。


こんなに近くに来るまで全く存在に気付かなかったなんて、不覚。


「…和樹」


「久しぶりなのにそんな顔すんなよ。幼馴染じゃん」


私と和樹は親同士が仲良くて、兄弟のように育った。


だけど高校が別々になって、そのまま関わりが少なくなったんだ。


「なんか良いことあったの?」


やけにしつこく聞いてくる。


何となく、和樹には先輩のことを言いたくない。

< 16 / 317 >

この作品をシェア

pagetop