先輩、私だけに赤く染まって

そう思いつつ、涼子の視線の先を追う。


確かにそこには稲原先輩らしき人がいた。既に空は薄暗くて判然としないけど涼子が言うならそうなのだろう。


駅前にあるベンチに座っていた。


だけど一人じゃない。


涼子が隠れた訳が分かった。


「あの人、彼女かな?」


少し低い声で涼子が呟く。


稲原先輩の隣に座る女の人。


稲原先輩がその人の方を向いていることから、偶然隣に座った関係ない人、ではなさそうだ。


彼女かどうかは分からないけど…。


「でもなんか、女の人泣いてない?」


綺麗な長い髪を垂らして、手を顔に当てている。


ここからじゃ声が聞こえないから詳しくは分からないけど、訳ありのようだ。


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