先輩、私だけに赤く染まって
「あーあ、稲原先輩彼女いたんだぁ」
先輩たちと距離をとって改札前まで来た私たち。
涼子はすっかりあの人が彼女だと思い込んでいるようで明らかにテンションが下がっている。
「まだ分かんないよ。兄弟かも」
このまま落ち込んでいたら、勝てるものも勝てなくなるかもしれない。
そう思った私は違う可能性に賭けさせる。
「先輩、一人っ子だよ」
「あ、そうなんだ…」
涼子の方が稲原先輩のことを知っていたようだ。作戦は呆気なく失敗してしまった。
「はぁ、付き合ってるのかなぁ」
あからさまにため息を吐く涼子。
よっぽどあの現場を見たことがショックだったようだ。