先輩、私だけに赤く染まって

ここまで来たのに収穫なしか、とガッカリしかけた私に話しかけたのは、またもや女の先輩。


小声だとしても向いにいる先輩にはさすがに聞こえていたか。


「私じゃなくて友達が、ですけど…諦めた方がいいってどういうことですか?」


学校でナンバーワンのモテ男の稲原先輩に、後輩ごときが手を出すな!みたいな?


早瀬先輩に向いていた体を、今度は女の先輩に向かわせる。


「私の彼氏が野球部だから暁人ともよく話すんだけど、アイツ好きな人いるから」


有益な情報を持っていそうだ。つい体を前のめりにしてしまう。


「彼女ではないんですか?」


「そ。ガッツリ片想いらしいよ」


私は昨日見た光景を思い出していた。


あの二人の距離は近かった。この先輩の言うことが正しければ恋の矢印は稲原先輩から謎の女。

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