先輩、私だけに赤く染まって
だけど、泣いていたのは女の方だった。
いまいち状況が分からない。
「それって他校の、髪が長い人ですか?」
「…さあ。流石に会ったことはないから」
そりゃそうだ。つい熱がこもって冷静でいられなかった。
付き合ってもいないのに友達に紹介なんてしないよね。
だけど、相手が誰にしろ稲原先輩はどこかの女に夢中。
ごめん涼子。アンタの片想いは敗れたり、だ。
「ありがとうございました。お仕事邪魔してすみません」
もうこれ以上のことは何も聞けないだろう。
仕事を中断するのを多分良く思っていなかった先輩の為に速やかに帰ろうと立ち上がる。
でも、それを呼び止めたのは早瀬先輩だった。