先輩、私だけに赤く染まって

「杉野さん、この前の約束来週でいい?」


約束?


また一緒に帰ろうとか?覚えはないけど、無意識のうちに言ってしまったのだろうか。


私がピンと来ていないのを見て、さらに続ける。


「ほら、甘いもの食べに行くって」


思い出した。いや、忘れてなんていなかったけど、むしろ先輩は忘れていると思っていた。


うやむやになってしまったと思っていた口約束。


それを覚えていてくれたのは勿論だけど、それよりも私を驚かせていたのは、今ここで誘ったことだった。


だって目の前には先輩の同級生だっているし、図書室の利用者もいる。


先輩にはその気はないのかもしれないけど、デートのお誘いみたいなこと、人の目があるところでは言えないって先輩ならそう思っていそうなのに。


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