先輩、私だけに赤く染まって
◇◇
「杉野、昨日ありがとうね」
私が登校して早々に、村田くんが話しかけてくる。
律儀な人だなぁ。
「先輩が手伝いに来てくれたから、大丈夫だったよ」
一緒に登校して来た涼子が何事?と私たちの顔を交互に見る。
「そっか、良かった」
涼子の視線を痛いほど感じながら自分の席に座る。
涼子が気になってるのは『先輩』っていうワードなんだろうな。
「言っておくけど、稲原先輩じゃないから」
突っ込まれる前に先手を打つ。
それを言った瞬間に目の輝きが消えて、途端に面倒くさげになった。
「稲原先輩とはまだ話したことないのー?」