先輩、私だけに赤く染まって
喜びの声が聞こえる前に続けて言う。
「でも、好きな人がいるんだって。多分、あの人」
「…あー、そうなんだ。あの二人、なんか雰囲気あったもんね」
泣いている女性を宥めている稲原先輩を見たとき、分かってしまうものがあった。
稲原先輩があの人を大切に想っていると。
流石の涼子もトーンが少し落ちる。
「教えてくれてありがとね。おやすみ」
一方的に電話を切られてしまった。
ああやっぱり言わない方が良かったかな。
だけど稲原先輩の気持ちを知っておいて言わないなんてむしろ涼子は嫌がりそうだ。
どうしよう、月曜日に会ったときに凄くやつれていたりしたら。