先輩、私だけに赤く染まって
涼子がどの程度、稲原先輩に本気だったかは分からないけど、
稲原先輩に好きな人がいると知って、早い話目が覚めたということだろうか。
「そうなんだ…」
気合たっぷりな涼子を否定しようとも思わない。
涼子ならすぐに彼氏は出来るだろう。
去年一年間で一体何人に告白されたんだか。
吹っ切れたような顔をしてるから、きっとこれでいいんだ。
「穂乃果は今日デートだっけ?」
「うん。緊張する」
今まで何度も一緒に帰ったことがあるし、なんなら先輩の前で泣いたことだったあるのに。
今日のデートはまた別物だった。
朝からずっと心臓の音が聞こえる。
緊張でご飯が喉を通らないなんて、初めて経験した。