先輩、私だけに赤く染まって

もしかしたらあの呟きは、私に向けられたものなんじゃないかって。


そんな自意識過剰なことを考えている間に、私の顔も気付けば火照っていた。


こんなの傍から見たらただのバカップルじゃないか。


構えていたスマホで、構図なんて何も考えずに適当に一枚だけ写真を撮った。


記念すべき一枚をこんなに慌てて撮ることになるとは。


「た、食べましょ」


未だに瞳孔が開いている先輩に声をかける。


そこでやっと正気を取り戻したみたいに、ぼんやりと返事をした。


赤いお皿に乗った二つのマカロンは、一つがショートケーキみたいに上に苺が乗っていて、もう一つは間にカスタードクリームがたっぷり挟まれている。


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