先輩、私だけに赤く染まって

それにならって私はカスタードクリームのマカロンを口に含む。


バニラビーンズの香りが口の中に広がる。


「…今、好きな人はいないんですか?」


好奇心旺盛な後輩のフリをして、何でもない風に尋ねた。


本当に聞きたかったのはタイプなどではなく、こっちだったのかもしれない。


この答えが然りなのか否なのか、どちらを期待するべきなのか分からない。


『いる』のならそれをどう受け止めたらいいのか。顔も知らないその人に嫉妬してしまいそうだ。


『いない』のならそれはそれで複雑。今まで私に見せた赤い顔はなんだったのか。


そう思っている時点でもしかしたら先輩は私を、と僅かでも思ってしまっているということだ。

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