先輩、私だけに赤く染まって

この世界に神様がいるとしたら、とんだ悪戯好きだと思う。


どうして?


この数ヶ月間、どれだけ先輩に会いたいと願っても学校ですれ違うことはなかったのに。


会いたくないと思っている今、先輩に会わせるんだろう。


体育終わりの先輩が、特別教室に向かう私とすれ違う。


会いたくないなら見なきゃいい。気付かないフリをすればいい。


そう分かってるけど、この目は先輩を追ってしまう。


だから先輩が私を見なかったことも、分かってしまった。


本当に気付かなかったのかもしれない。


だけど私には意図的に見なかったのではないかと思えて仕方なかった。


先輩が私を避ければ避けるほど、好きという気持ちが私を締め付ける。


これが駆け引きなら大成功だよ、先輩。


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