先輩、私だけに赤く染まって

そう思うと、今までの悩みは何だったのかと思うくらい、スッと声にしていた。


「先輩、少し話せますか?」


早瀬先輩は戸惑った顔をした。どうするべきかと考えているようだった。


でも結局、優しい先輩は私を突き放すことが出来ない。


だから近くにあった椅子を引いて、そこに座った。


私も隣に座って、先輩に向き合う。


先輩は斜め下を向いていて目を合わせてはくれない。


ああ、何から話したらいいんだろう。


声をかけたのも衝動的なもので、どうしたいとかちっとも考えていなかった。


「先輩、覚えてますか?最初に先輩とここで話したときのこと」


ああ違う。こんな話をしたいわけじゃないのに。


「…忘れるわけない。君が俺に言ってきたおかしなこと全部覚えてる」


< 225 / 317 >

この作品をシェア

pagetop