先輩、私だけに赤く染まって

恨みを込めて言ったんだろうその言葉は、私にとっては嬉しい以外の何物でもない。


先輩の中に私が焼き付いていると分かっただけで、胸が熱くなる。


誰もいない図書室で先輩と私の二人きり。


もう自分を抑えられそうになかった。


「早瀬先輩…、好きです」


振られたら、なんて考えるよりもこの気持ちをしまっておけない。


合わせてくれなかった目がゆっくりとこちらを見て、重なった。


動揺に瞳が揺れる。


僅かに開かれた口から戸惑いの息が漏れたが、声にはならない。


眉間にシワを寄せて、眉尻を下げる。


「…ダメだよ、杉野さん」


苦しそうに吐かれた言葉は、断りではなく、拒否だった。


< 226 / 317 >

この作品をシェア

pagetop