先輩、私だけに赤く染まって
力強い腕が私を抱き締める。いつもの先輩じゃないみたいだった。
間違いなく私を求めてくれている。
全身が震えるくらい嬉しかった。
名残惜しそうに顔が離れていくと、見えたのは気まずそうに口を固く結んだ先輩の表情。
まるで禁じられたことを犯したような。
「私のこと、好きだって…」
キスに流されたんじゃなくて、その言葉は本当だって言ってほしい。
「どうしようもないくらい惹かれてる」
私の顔には笑顔が出かけた。だけど先輩の声は、言葉とは裏腹に苦し気だった。
「だからダメなんだ。こうなる前に離れるべきだった。距離をとらなきゃって思うのに、杉野さんに会いたい自分もいて、ここまで来てしまった」