先輩、私だけに赤く染まって

先輩の言っている意味が理解できなかった。


好きって、それだけじゃダメなの?


どうして離れようって。


「なんで?好きなのに…離れなきゃないの?」


「付き合ったら俺は必ず杉野さんを苦しめてしまう」


あの日、私に誰かを重ねていたように。今もまた過去の誰かに先輩は囚われていた。


「勝手に決め付けないで!先輩が好きなんです、それだけじゃダメですか…?」


先輩は泣きそうに、目を閉じた。


私を苦しめてしまうと言っておきながら、苦しんでいるのは先輩じゃないか。


何が先輩を不安にさらしているのか。


「…ごめん」


次に口を開いたとき、告げられたのは愛の言葉ではなく別れの言葉だった。


< 230 / 317 >

この作品をシェア

pagetop