先輩、私だけに赤く染まって
先輩の言っている意味が理解できなかった。
好きって、それだけじゃダメなの?
どうして離れようって。
「なんで?好きなのに…離れなきゃないの?」
「付き合ったら俺は必ず杉野さんを苦しめてしまう」
あの日、私に誰かを重ねていたように。今もまた過去の誰かに先輩は囚われていた。
「勝手に決め付けないで!先輩が好きなんです、それだけじゃダメですか…?」
先輩は泣きそうに、目を閉じた。
私を苦しめてしまうと言っておきながら、苦しんでいるのは先輩じゃないか。
何が先輩を不安にさらしているのか。
「…ごめん」
次に口を開いたとき、告げられたのは愛の言葉ではなく別れの言葉だった。