先輩、私だけに赤く染まって
「テストの話じゃなくて。先輩と良いことあった?」
「それが振られちゃったんだよねー…」
数式を書いていた手を止め、両手で頬杖をつく。
涼子に言ったのはこれが初めてだった。
「えっ」
目をまん丸にして、涼子らしくない低い声で驚いた。
驚いて当然だ。涼子の中では私と先輩はデートに行った順調な関係のままで止まっているのだから。
「でも好きだって言われたの」
「はっ?」
「だから落ち込んでないよ、まだ諦めてないから」
そう言って笑ってみせる。対して涼子は笑う余裕もないほど混乱しているようだ。
涼子に隠していたわけじゃないけどこれを言うことでやっぱり少しは気を遣わせてしまうだろうから、機会を窺っていた。