先輩、私だけに赤く染まって
校門の近くにはテスト終わりの生徒が沢山いる。
叫べばきっと注目を集めるだろう。
いつもならクラスで発表するのでさえ嫌いな私は、こんなこと出来っこない。
だけど今の私にとっては、先輩以外の存在はどうでも良かった。
「早瀬先輩!」
すうっと息を吸い込んで、先輩に向けて叫ぶ。
思ったよりも響いた私の声に、大勢がこちらを振り向いたけど、すぐに楽しげな会話に戻っていく。
肝心な先輩はというと、叫んだ直後に確かに歩みを止めたのに。
振り返ることなくそのまま足を進め始める。
「あ、ちょっと!」
あの人…!確実に自分が呼ばれたと気付いているのに、無視した。
急いで階段を駆け下りて、外に出る。