先輩、私だけに赤く染まって
「ほら、涼子がトイレに行ってる間に応援してますって言ってきた人いたじゃん」
私は涼子に必死に説明する。
「あー、そんな人もいたような…?」
本当に思い出したんだか思い出してないんだか判然としない受け答えをし、その的は彼に向かう。
「健斗だったの?」
真っ直ぐに涼子に見られて、ますます嫌そうな顔をする。
十中八九当たりだろう、コレは。
「そうです。あのとき涼子さんを見つけて、つい」
素敵じゃないか。縁があるよ。
まさかあのときの少年が今こうして涼子の彼氏になっているとは。
「へーえ?優勝するまで私に話しかけないって決めてたんじゃなかったっけ?」
からかうように涼子が彼に言う。